愛と恐怖の心霊夜話

第31回 呪詛合戦

深夜に突然、警察から連絡が……

呪詛合戦

これは私の親族も関わっていた忌まわしい過去の出来事についての話です。今まで誰にも話したことはなかったのですが、当事者の1人であった妹はとうにこの世にはおらず、ご縁があってご相談に乗っていただいている花染の先生も「厄落としのつもりで、書ける範囲のことを書いてみたらいかがですか」と勧めてくださったので、迷いながらも拙い筆を取る決心をいたしました。

話は今から10年以上も前にさかのぼります。当時、大学生だった私は某県内にあった実家で両親と兄妹合わせて5人で暮らしていました。私は長女で上に勤め人の兄が1人、下には3歳年下の妹がいたのですが、ある日の深夜、この妹が警察に保護されたという連絡が入ったのです。

その日、妹は同級生宅に泊まって一緒に試験勉強をしていたはずでした。念のために母がその友達の家に電話をしてみると、午後11時頃に「やっぱり自分の家へ帰る」と言い残して出て行ったことが分かりました。慌てた父母が身柄を引き取りに出掛け、私と兄は家で待つことになりました。女子高生の妹が一体、深夜に何をしでかしたのだろうと案じていると、いきなり兄が気になることを言い出しました。

「親父やお袋には話していなかったんだけれど、俺さ、この前、利矢子が藁人形を作っているところを見ちゃったんだよね……」
利矢子というのは妹の名前です。それが藁人形を作っていた?!……にわかには信じられない話でした。

「藁人形って、あの人を呪ったりするやつ?まさか、ウソでしょっ」「いや、何に使うつもりだったのかは知らないけれどさ、ありゃ間違いなく藁人形だった。ほら、おとといの晩に俺、残業で家に帰るのが遅かっただろう。その時にさぁ……」

兄が寝静まった我が家に帰宅し、足音を潜めて自室へ入ろうすると、隣にある妹の部屋から奇妙な声が漏れているのに気づいたそうです。じつは妹は時折、夢にうなされて寝言を口走る癖があったのです。兄はまたそれが起きたのだろうと思い、音を立てずに部屋のドアを少しだけ開きました。すると室内の片隅に置かれたスタンドランプの灯りの下で身を屈める利矢子の姿が見え、その片手には藁を束ねた人形(ひとがた)が握り締められていたのだと……。

「お経を唱えてるみたいにうなりながら、その藁人形の頭を撫でつけてたんだよ。こっちに背中を向けていたから顔は見えなかったけど、ちょっと陶酔している感じだったな。とにかくすげー気持ち悪くてさ、家族だってことも忘れて鳥肌が立ったよ。で、次の朝、何をやっていたのか本人にそれとなく訊こうと思ったんだけど、どう切り出せば良いのか分からなくて、それきりになっちゃって」

兄の話が信じられぬままリビングでの時が過ぎ、やがて日が昇りきった時刻にようやく玄関の呼び鈴が鳴りました。ドアを開けると、そこには父と母に両脇を抱えられてうつむく妹の姿がありました。

「利矢子、一体どうしたの!」私が声を掛けても顔さえ上げず、そのまま父母の手を離れて2階へ上がる妹。その姿は憔悴しきっていました。まるで病を患った老婆のように見えたことを、今でもはっきりと憶えています。

丑の刻参り

その後、妹が眠ったのを確認すると、何があったのかをあらためて父母に問い質しました。2人ともしばらくは押し黙ったままでしたが、やがて父の方が困惑した表情でぽつりと漏らしたのです。「山の方へ行く途中の道に××神社っていうのがあるだろう。そこの境内で保護されたらしい」

神社の宮司が境内を見回っていた時、裏手の森の方に不審な人影があることに気づき、すぐに警察へ通報したそうです。そこの神社では以前から禁足地の御神木に対する悪質ないたずら行為が頻繁に起きていたため、宮司や近所の氏子たちが交代で深夜パトロールを続けていたとのことでした。そしてほどなく神社に到着した警官たちが茂みの中に佇む利矢子に声を掛けると、とたんに狂ったように喚きながら飛びかかってきたので、違法薬物の服用の疑いを掛けられて補導されたという次第でした。

「まさか利矢子が麻薬?!」驚いて声を上げると、父は即座に首を横に振り、「いや、幸いそういうことじゃなかった。警察に連れて行かれてすぐに検査したそうだが、薬物反応は一切出なかったと言っていた」「じゃあ、どうしてそんな真似を……」「それが分からないから心配しているんだ。英美は何か知らないか?」

問い返された私は思わず兄と顔を見合わせました。父と母は私たちの目配せにすぐ気づき、しかたなく兄は2日前の深夜に見たことを正直に話したのです。すると今度は母がその場に泣き崩れ、「ううぅ、宮司さんたちが言っていたこと本当だったわ。あの子、やっぱり丑の刻参りをしていたのよ!」と低いうめき声を漏らしました。

神社の森では、1年ほど前から何度か藁人形の残骸が見つかっていたそうです。いずれも木の幹に打ちつけられた格好で、呪いの儀式に使われたことは一目瞭然だったと。妹が同じことをやっていた物的証拠は出なかったのですが、すでに兄が彼女の部屋で藁人形の現物を見ている以上、丑の刻参りをしていたことは疑う余地はないように思われました。しかし、身も心も衰弱したように見える本人をすぐに問い詰めることは酷なので、しばらくは何も訊かずに様子を見るということになったのです。

妹はそれから2日ほど自室に閉じこもったままでしたが、3日目の夕刻に父の知り合いの精神科医が家にやってきて、そのまま入院することになってしまいました。何かの原因で強い精神的ショックを受けて、パニック状態が続いていると言われました。

姉の私が知る限りでは、とくに性格的な問題があるわけでもなく、また何かに悩んでいた様子も見受けられませんでした。妹はどこにでもいる、ごく平凡な女子高生だったのです。それが突然、どうしてこんなことになってしまったのか、いくら頭を巡らせても思い当たる節がなく、悲しみや不安の気持ちと共に首をかしげるばかりでした。

(それにしても、あの子、一体、誰を呪ったんだろう……)私の脳裏に浮かんだ疑問は、ほどなくして明らかになりました。

妹の同級生から告げられた真相

妹が入院して数日後、大学からの帰宅途中に恵里奈ちゃんという女の子と出くわしました。彼女は利矢子の高校の同級生で、事件があった日に当人が泊まりに出掛けていたのもその子の家でした。彼女は私の顔を見たとたん、思いつめた表情で涙を浮かべ始めました。

「お姉さん、今ちょっと時間ありますか?」「え、どうしたの?」「利矢子のことでお話があるんです。道端では話しにくいことなので」
言われるまま近くの喫茶店に入ると、注文を受けたウエイトレスが去ったのを見計らって、恵里奈ちゃんは驚くようなことを語り始めたのです。

「利矢子、うちを飛び出してから神社に行ったんですよね?そこで藁人形に釘を刺していたんでしょう?」「ど、どうしてそんなこと知っているのっ?!」「やっぱり、本当にやっちゃったんだ……」
事件の晩、利矢子は恵里奈ちゃんの家で「今、人を呪っている」と彼女に打ち明けたそうです。その相手はやはり同じクラスメイトのAという子で、向こうも同じように藁人形を使って妹を呪っていたのだと聞かされました。

「きっかけはただの遊びだったんです。私と利矢子、それからAも入っていた友達グループの中で、藁人形の呪いって本当に効くのかなって話になって、Bっていう子がそれを実際に試しちゃって……」

Bというのはそのグループのリーダー格の子だったそうです。普段から占いやオカルトに関心が強く、自分から進んで丑の刻参りを実践し、思わぬ効果が現れたのだと。 「今、藁人形ってネットの通販なんかで簡単に買えるんですよ。Bはそれを手に入れて、夜中にどこかの神社で丑の刻参りをやっちゃったらしいんです。そうしたら少し経った頃、Bが呪った先生が交通事故に遭って死んじゃって」

その女性教師は日頃、成績も素行も悪いBを目の仇にして辛く当たっていた人物でした。それがいきなり亡くなってしまったことで、この呪い方は本当に効果があるということになり、他の女の子たちもこぞって同じことを始めたそうです。しかも仲間内で互いを呪い合うという行為を……。

「友達グループって言いましたけれど、元々はBとその取り巻きにいじめられるのがイヤで、しかたなく付き従っていたような集団だったんです。クラスで人気の男子を巡って裏で嫌がらせやらケンカやらっていうのもしょっちゅうで、ホントはみんなお互いに憎み合ってました。それで最初にBがターゲットにされて……。誰が呪ったのかは分からないけど、またホントに事故で死んじゃって、そうしたら今度はAがリーダー面をし始めて、利矢子はそれがスゴクむかつくって……」

私はついに耐えきれなくなり、話の途中で店を飛び出しました。頭の整理ができないまま、呆然となって家にたどり着くと、そこには妹の訃報が待っていたのです。死因は自殺でした。入院していた病室をいつの間にか抜け出して、再び発見された時にはビルとビルの隙間に挟まっていました。遺書も残さない発作的な投身でした。 10年過ぎた今もなお、頭の中は混乱したままです。何かの拍子で「藁人形」という言葉を耳にしたとたん、全身がすくんで動けなくなります。

(英美さん 31才・埼玉県)

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