愛と恐怖の心霊夜話

第32回 襖

襖の隙間から出てくる真っ白な小人

襖

以前、旅先の温泉旅館に泊まった時、不思議な体験をしたことがあります。部屋に通されて荷物を置いた時から、襖が少し開いているのです。両面開きの収納の下部にある小さな襖なのですが、それが5cmほど開いているのを見つけました。前の宿泊客の片付けをした時に閉め忘れたのかもしれない、と思い、開いたままもなんだか気味が悪いので閉めておきました。その後、大浴場に行って温泉の湯船に浸かり、旅の疲れを癒して戻ってきたら、また襖が少し開いていました。さっきと同じ5cmくらい。「おかしいな、さっき閉めたはずなのに」とまた閉め直しました。それから食事が運ばれてきて、夕飯を食べたのですが、食べ終わった後に後ろを振り返ると、またその小さな襖は5cmほど開いていました。

3回も閉めたのに気が付くと開いているので、これは「立てつけが悪いのだろう」と思い、気にしないことにしました。私はあまり幽霊や怪談の類を信じないタイプだったので、それが霊の仕業かもしれない、という発想に至らなかったのです。しかし、その夜、私は生まれて初めての心霊体験をしました。地元のテレビも見飽き、心地よい眠気がやってきたので、電気を消して布団に入ったのですが、眠りに落ちようかという瞬間、襖のある方から、スルスルスルという衣擦れのような音がしたのです。顔を動かさずに目だけを動かしてそちらのほうを見るたら、全長20cmくらいの大きさの真っ白い和服を着た何かが、襖から出てきました。そして私の枕元を通って、そのまま向かいの壁の中に消えていったのです。

今のは一体……。私の頭の中は混乱していました。なんせ今まで幽霊など一度も見たことがなく、怪談話も適当に話半分で聞いているような人間だったからです。そんな自分が理屈では解明できないようなものを見てしまうなんて……。理解を越える体験に、あっけに取られていました。するとまた、襖のほうからスルスルスルという音が聴こえてきました。また顔を動かさずに目だけで見ると、さっきとまったく同じ、全長20cmくらいの真っ白い小人が現れたのです。小人はさっきとまったく同じ具合に私の枕元を歩き、そのまま向かいの壁に消えていきました。こちらのことはまったく気にしない様子でした。もしかして、何度襖を閉めても5cmほど開いているのはこのせいか。私はようやく襖の謎に気付きました。この襖は、この幽霊か妖怪か分からない謎の存在の通り道だから、何度閉めても襖が勝手に開くのだ、そう納得しました。

しばらくするとまたスルスルスルという衣擦れの音が聴こえました。また横目で見ると、やはりまったく同じ小人が出てくるところでした。おそらくこの小人は絶え間なく現れる。そして少なくとも、こちらから何かしなければ危害を加えてくることはない。もう無視したほうがいい。寝よう。そう思い、私は目を閉じ、そのまま眠ってしまいました。

翌日の朝食は広間でのバイキング形式でした。軽く食事を取り、部屋に戻ると、まだ仲居さんが布団を片付けている最中でした。「すいません、今片付けますね」そう言う仲居さんに「いえ、お気になさらず。煙草でも吸ってきますから」と言い踵を返そうとすると、仲居さんが「昨日はよく眠れましたか?」と話しかけてきました。変な小人が枕元を歩きまわっていた、なんて言えず、私は「ええ、おかげさまでぐっすり眠れました」と答えました。すると仲居さんはホッとした表情を浮かべ、「それはよかったです」と笑い、その後、例の5cm開いた襖をチラリと一瞥したのです。なんとなく、この人はこの部屋に何か曰くがあるのを知っているような感じがしましたが、特に聞かないことにしました。

後日談は特にありません。変なものを見るようになったり、妙な体験をするようになったり、といったこともなく、不思議な体験はそれ以来一度たりともしていません。しかし、私の中に変化はありました。この体験をするまで霊や妖怪の類は信じなかったのですが、それからというもの、そういったものに興味を示したり、占いを楽しむようになったりしました。この世の中には、理屈や科学では証明できない不思議な存在や不思議な力があるのだな、と気付かされた体験でした。

(康司さん 39才・東京都)

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