第10回 来光華先生元カノを「ただの友達」と言い張る、無神経な婚約者

恋人や配偶者が以前付き合っていた女性、つまり元カノとのつながりを断ち切れないでいる、そうしたお悩みを訴えるお客様がいらっしゃいます。男性側は「今はもうただの友達同士なんだから良いじゃないか」と気軽に言いますが、女性側はそう簡単には受け止められません。「焼けぼっくいに火が点いたらどうしよう」と疑心暗鬼に駆られたり、あるいは「こんなことでいちいち嫉妬する自分は、女として醜いのではないか」と過剰に自分を責めたり、とにかく心が千々に乱れて気が気ではなくなります。元カノを今は友達と公言して憚らない男性に対してはどういう態度を取るべきなのか、今回、ご相談者と共に考えてみました。

電話がつながりわずか数分で、婚約したまま結婚へ踏み切れない状況を看破！

霊能者こんにちは。来光華でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

美苑（敬称略、以下同）あ、どうも、こんにちは。姉からは「凄まじい勢いで、何でも当てちゃう恐ろしい霊能者」だと聞いたのですが、こんなに上品で穏やかな声の方なんですね。良い意味でイメージと違いました。

霊能者お誉めいただき、恐縮です。お姉様も私の鑑定を受けられたことがあるのですか？

美苑はい、去年の冬くらいに。職場の悩みを相談したら、嫌味な課長がいつも千鳥格子のジャケットを着ていることまで当てられて、目が飛び出すほど驚いたって。しかも話し始める前にいきなりだったって。

霊能者イレギュラーに霊視のビジョンが飛び込むことがあるんです。そういう時にはすぐ、お客様に確認を取っているものですから、時々、戸惑わせてしまうようで……。もし、今回もそういう場面がございましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。

美苑いいえ、何でも言ってください。今は何か見えています？

霊能者ええ、じつは……。ちょっと過激なビジョンなので、申し上げても良いのかどうか迷っていました。

美苑（急に切迫した口調に転じ）言ってください！知りたいです！

霊能者ベッドで仲睦まじく寄り添っていた男女のところへ、いきなり別の髪を振り乱した女性が飛び込んできて、男性の胸に包丁を突き立てようとしている……そんな情景です。

美苑（絶句）……。

霊能者この包丁を持った女性は、失礼ですがあなたですよね。

美苑（トーンダウンしたかすれ声で）……はい。

霊能者ビジョンに現実味がないので、恐らくこれはあなたがいつも頭の中で思い描いていることですね。

美苑（全てを見通されていることに恐怖を感じた様子）……う、ううっ。

霊能者お辛いですか？いったん止めましょうか？

美苑いえ、続けてください。

霊能者分かりました。ビジョンの中でのあなたは、「やっぱり、切れてなかったのね！」と絶叫しながら、婚約指輪らしきダイヤのリングを男性に投げつけています。それから「半年も振り回しやがって。この人でなし！」と。これはつまり、婚約したままの状態が半年間続いていたということでしょうか。

美苑（茫然自失から少し立ち直った様子）……いえ、過去形ではなくて、今も婚約してます。まわりの知り合いたちも、そろそろ変な陰口を言い始めたみたいで……私、どうしたら……ウウウウウッ（いきなり号泣）。

霊能者ね、まずは少し落ち着きましょう！（急きょ、電話越しに鎮静と癒しの波動を送る）

婚約者の容姿などを言い当てた後、話は本題へ

霊能者（数分経過後）いかがですか。お話しを続けることはできますか？

美苑（しゃくり上げながら）ヒッ……は、はい。

霊能者つまり婚約者の浮気を強く疑っているので、結婚に踏み切れないままでいる、という理解でよろしいのでしょうか。

美苑ううん、少しニュアンスが違うんです。（落ち着きを取り戻したらしく、自分から話し始める）彼とは今から1年半くらい前に知り合いました。友達に合コンやるから来ないかと誘われて、そのお酒の席で。最初は向こうから誘ってきたんです。嫌いなタイプではないのでＯＫして、順調に付き合い始めました。それで半年前の春に婚約して……。

霊能者この男性、身長が高くて見た目が格好良くて、知的でとても話が上手い感じでしょう。女性に好かれるタイプの典型ですね。ああ、それから着こなしもかなり堂に入ってますね。男にしては服にうるさくて、お洒落にも気を遣う人ではないですか？

美苑（完全に的中していることに、あらためて愕然とする）せ……先生、そんなことまで見えちゃうんですね。あの人、学生時代に男向けファッション誌の読者モデルに選ばれたのが今も自慢みたいです。

霊能者そうですか。あ、ごめんなさい。話の腰を折りましたね。お続けください。

美苑いいえ、そんな……。それで私、その前後からあることが気になっていたんです。デートなんかで一緒にいると、同じ女から頻繁に連絡が入るんですよ。LINEとかメールで。当然こっちも気になって「誰？」って訊いたら、アイツ悪びれもせずに「元カノだよ」って。学生の頃に半年くらい交際していた相手だそうです。男と女として終わってからも友達付き合いは続いていて、今でも仕事の悩みとか相談し合っているって。「そんなの私に相談すればいいでしょ！」って怒ったら、「君には分かんないことだから」と言い返されました。彼、金融関係のシステム構築みたいな仕事をしているんですが、向こうの人も同じ業界らしくて。たしかに専門的なことは分かりませんけれど、だからって……。

霊能者ちょっと納得できませんね。

美苑ですよね！それでけっこう怒ったんです。さすがに向こうも響いたらしくて、疑いを晴らすために今度その人を紹介するって言い出しました。一度、３人で会って飲もうって。でも私、断りました。あの人と相手の女に馬鹿にされているような気がして。この微妙な感情、分かってもらえます？

霊能者分かります。嫉妬深い女という烙印を、勝手に押されたように思われたのでしょう？

美苑そう！元カノともう何もないにしたって、そこが一番腹立たしいんです！アンタ、本当に私のこと、愛してるのって！そんなこんなでスッタモンダが始まって……。

霊能者しかし、婚約解消ということにはならなかった。

美苑（消え入るような声で）ええ、そうなんです。惚れた方が負けって言うけれど、その通りですね。でも、挙式は先延ばしということにしています。どうしても寛容になれないんです。それでこの前、「その女の人との友達付き合いは、今後は完全に断って欲しい」とあらためて言ったら、それきり連絡が来なくなって……。

霊能者それで私に相談されたと。

美苑はい。どうしたら良いのか、もう自分では分からなくなりました。

婚約者と相手の女性を詳しく霊視。やましいことは何もないと確認したものの……

霊能者（少しの間、詳細な霊視に入る。それを終えて）さてと……。今、一通り見てみたのですが、元カノとは携帯でのやり取りだけではなくて、たまに会って食事をしているようですね。もっともその時には他のメンツも何人か同席しているので、２人だけの密会ということではないのですが、これについてはご存知でしたか？

美苑はい、知っています。その度に本人が律儀に報告してきますから。それが私に対する誠意だと思い込んでいるみたいです。こっちは「そこじゃないだろ！」って言いたいんですが。いや、実際に言っちゃったこともあるかな（笑）。

霊能者初めて笑いが出ましたね。

美苑あ、そうですね（自分で気付いて驚く様子）。先生とお話ししているうちに、何だか急に気持ちが楽になってきました。不思議ですね。

霊能者今の笑い声を聞いて、この問題、すぐに解決できるのではと感じました。

美苑本当ですか？！

霊能者自分と元カノとの友情のどちらを取るのか、この際、はっきりと突きつけるべきです。「こちらの条件を聞いてくれないのなら、婚約を解消します」と彼に宣言してください。

美苑（不安げな声で）でもそんなことしたら、もしかして……。

霊能者大丈夫です。彼の深層心理まで読み取った上での判断ですから。懸念されているような事態に陥ることは万にひとつもありません。先ほど、惚れた自分が負けとおっしゃいましたが、負けるのはむしろ彼の方です。

美苑（しばらくためらうも、やがて吹っ切れたように）分かりました。先生が本物の霊能者ってことはもう確認済みだし、信じてやってみます！その上でまた結果をご報告します。

霊能者そうなさってください。

美苑ありがとうございます。じゃあ、いったん切りますね。