ひょうい憑依
霊体が他の肉体に入ること、また霊体がその侵入した者の意識を占拠することを憑依と呼びます。憑依には二種類あり、「自らの意思で霊を招き入れる憑依」と「霊に侵入されて支配される憑依」は全く異なります。
前者は、巫女や霊媒師が霊降ろしをする際のものです。巫女や霊媒師は、死者霊や自然霊、先祖霊、また高位霊や神をその身に降ろし、宿し、その意思や託宣を引き出すことができます。これは自らの意思で霊と波長を合わせ、招き入れることとなりますので、術および術者の実力が完全なものであれば、一時的なトランス状態に陥ることさえあれ、意識を完全に乗っ取られるような事態にはなりません。巫女や霊媒師はそうすることで、未来に起こる出来事や、土地にまつわること、国や政治、戦争にまつわることなどを予言し、また個人の未来や吉凶などを鑑定することが可能です。
そして後者は、霊的に弱った者や霊の恨みを買った者が、悪意を持った霊体に意識を乗っ取られるものです。低級霊に憑依された人間は体調や精神状態が著しく悪化します。また目付きが悪くなったり、時には嫌なにおいを発したり、食欲や性欲が肥大したりすることもあります。症状がより進行すると、衝動的に犯罪に走ったり、強烈な希死念慮に襲われたりすることもあります。この現象は死者の不浄霊によって起こされる他、「狐憑き」を代表とする動物霊、また神霊によって起こされる場合もあり、強烈なものは「祟り」と呼ばれます。また、生きている人間が他人に対して強烈な執着や恨みを持った際に飛ばす生霊に憑依されるケースも多々あります。
ほぼ全ての憑依は、本物の力を持つ霊能者が相応の術を行うことにより除霊・浄霊が可能です。しかし、土地や家の禁忌を犯し、神霊の怒りを買い憑依される「祟り」に関しては人間の手ではまず解決不可能です。霊と神はまったく次元の違う存在であり、怒り狂った神はそれほど恐ろしい存在なのです。