こうしんじゅつ降神術
霊媒による降霊術の一種です。死者霊や先祖霊、守護霊といった存在は元々人間の霊魂であり、そういった存在も強い力を秘めてはいますが、それよりももっと上位の「神」「仏」と呼ばれる高級神霊を降ろす術です。高級神霊は人知を遙かに超えた絶大な力を持ち、現世におけるあらゆる願望を成就するほどの存在ですが、その力は人の身には過ぎたるものであり、類稀なる才能を持った者が正統かつ厳しい修行を積むことによって初めてその一部を降ろすことが出来ます。
神をその身に降ろす降神術は古より世界各地で行われてきました。「巫女」「祈祷師」「精霊術士」といった存在がそれに相当します。彼らは時にハーブや薬を用いて自らをトランス状態にし、その身を依代にして神霊を憑依させ、その託宣を得ることで、個人の未来だけでなく天候や作物の実り、戦争の結末、国家や民族の行く末までも占ってきました。そういった意味で、降神術とは「占い」という概念、「占う」行為の基本となる要素のひとつである、と言うことすら出来るでしょう。
日本においてもっとも有名な降神術の使い手は「ユタ」です。彼らは琉球地方に伝わる自然霊や精霊と交信することで、その叡智を授かり、通常であれば知り得ないことを知ったり、加護を取り付けたりすることが可能であると言われています。ユタも厳しい修業を経て一人前になる過程があり、その修業はいわば俗世を捨て世捨て人となる要素を含んでいます。神の力をその身に宿す力は、多くの代償を支払って初めて会得することができるものなのです。一般の方に死者霊が憑依したところで運気低下や精神悪化といった症状しかありませんが、同じように神霊の力が憑依した場合、たちどころに精神そのものが壊れ、気が触れてしまうでしょう。生半可な者が神の力を宿してしまった末路は大変悲惨なものです。
また、そういった神霊は多くの場合、現世利益に直接的に関与しようとしません。ですから、降神術は「恋を叶えたい」「金運を上昇させたい」といった願望にはあまり向いていない霊術と言えるでしょう。高次元の存在は個々の人間の幸不幸とは関係ない存在なのです。しかし、その代わり、「現世に生まれた使命」「前世であった出来事」といった、魂レベルの事象を鑑定する際には、大きな効力を発揮します。また、「3ヶ月後に訪れるラッキー」を占うには不向きですが「10年後の未来のこと」や「幸せな人生を送るための方法」といった広い観点の物事においてこの上なく正しい啓示を得ることができるでしょう。したがって、恋愛相談ではなく、人として生きるための指針を伺う場合などに用いられます。