第30回 霊感のある彼女
昔の彼女が霊感のある人でした

もう10年前くらいに付き合っていた彼女が、霊感のある人でした。普段からとても勘が鋭く、隠し事をしているとすぐに見抜かれてしまうので、嘘は一切つけませんでした。また、ドライブデート中など、会話が弾んでいたのに急に無言になることがあり、そういう時はだいたいしばらく進むと事故注意の看板があったり、道路脇に花が供えてあったりしたものです。彼女も私に気を使ってか、「霊がいる」といったことは口にしませんでした。しかし、雰囲気や表情がサッと変わるので、すぐにわかりました。
車で遠方まで一泊二日で遊びにいくことになり、ラブホテルに泊まったことがあったのですが、そこで大変な目に遭ったことがあります。空き部屋がひとつしかなく、そこに泊まったのですが、入った瞬間に彼女の顔色が変わり、いつもの“何かまずいものが近くにいる感じ”になったのです。「この部屋、やばいの?」とおそるおそる聞いてみましたが、彼女は「ううん、大丈夫。気にしなければ平気」と答えました。明らかに何かがいる様子でしたが、他に空き部屋もないので、私は彼女の言葉どおり、気にしないことにして、そこに一泊しました。私は運転の疲れもあり、ぐっすり寝てしまったのですが、彼女は一睡もできなかったようでした。そして翌朝、チェックアウト前に身だしなみを整えようと鏡を見たのですが、その鏡のガラス一面に手形がびっしりとついていたのです。チェックアウトした後、彼女に「やっぱりあの部屋には何かいた?」と聞いてみたら、「うん。女の人がいた。でもずっと鏡を見てて、特に何もしてくる気配がなかったから、一泊くらいなら大丈夫かなって」と言っていました。
また、彼女には「もうすぐ死んでしまう人がわかってしまう」という能力がありました。以前、知り合いが死ぬ前日にハッとしたものの、気のせいだと思い何も言わずにいたら、翌日本当に自殺してしまった、とのことでした。その話を聞いた時はあまり実感がありませんでしたが、後に共通の友人と会った際に同じようなものを感じたらしく、後でこっそり私に教えてくれました。友人は明るい性格で、何か思い悩んでいる節もなく、自殺するようなタイプの人ではありませんでしたが、バイクに乗っているので、万が一のことがあっては寝覚めが悪いと思い「事故や怪我に気をつけて」と忠告しておきました。しかし数日後、その知人はバイクの運転中にトラックと衝突する大事故を起こしてしまったのです。幸いにも一命は取り留めましたが、バイクは粉々に大破。一歩間違えたらあの世行きになっていたそうです。
他にも細々とした不思議なエピソードがたくさんあります。彼女には結局、私の浮気未遂を見抜かれ、お別れすることになったのですが、今でも忘れられません。
(大悟さん 34才・岡山県)