第51回 先祖のおぞましい因縁
彼の実家に足を踏み入れた瞬間、刺すような敵意を感じました

以前、結婚を考えていた彼氏がいました。でも、その彼とはお別れすることになりました。これは、彼との破局にまつわる話です。彼はとても誠実な好青年でした。出身地は関西地方のとある県。私は彼からプロポーズされ、それを受け、初めて彼の地元の実家にお邪魔しました。彼の実家は田舎の大きなお屋敷でした。「うちは有名な大名の末裔なんだ」と聞いていましたが、本当に立派で驚きました。
でも、屋敷の門をくぐった途端、ものすごい眩暈に襲われたんです。周囲のすべてが私を憎んでいるかのような敵意を感じて、思わずその場にうずくまってしまいました。すると玄関から彼のお母さんが出てきてくれて、私達を出迎えてくれたのですが、初対面でうずくまっているのも失礼だと立ち上がろうとした次の瞬間、意識を失ってしまいました。
次に目覚めた時、私は近くの病院にいました。傍らには彼氏と、さっき見た彼のお母さん、その横に知らないお婆さんがいました。心配そうな表情を抱える二人に対して、お婆さんは私にちょっと憎しみの混じった表情を浮かべていたのが印象的でした。そのお婆さんは彼の祖母でした。そして、お祖母さんの口から驚愕の事実が話されたのです。
「お嬢さん。申し訳ありませんがうちの孫とあなたは結婚できません。あなたの家は昔、私達の先祖の多くを殺した家の末裔です。私達の先祖はあなたの先祖と敵対し、戦に負け、虐殺されたのです。その恨みが一族に残っています。門をくぐった途端に具合が悪くなったのはそのせいです。あなたの一族だけは受け入れることはできません」そう言われました。冗談かと思っていたのですが、彼も、そのお母さんも、何も言わずに俯いていました。その後、私は帰りの電車賃を手渡され、ひとりで家に帰らされました。彼とは連絡がつかなくなり、それ以来一度も会っていません。
(実佳さん 37才・静岡県)