第62回 徘徊老人の霊
近くの用水路でお年寄りが亡くなって以降、怪現象が起こるように…

数年前、近所のお年寄りSさんが行方不明になり、近所の用水路の中で遺体になって発見されました。痴ほう症が進んでいたとのことで事件性もないと判断され大きな騒ぎにはなりませんでした。でも、その事件以降、夜にその用水路の付近を通りかかった人たちが、霊を見るようになったのです。霊を見たという人たちは、みな口々に「Sさんだった」と言います。なんとなく薄気味が悪いと思いましたが、その用水路のそばの道路はショッピングモールに行く近道だったので、たびたび車で通っていました。そしてついに、ある日の晩、わたしもSさんの霊を見てしまったのです。
暗闇から急に人がよたよたと飛び出してきたかのように見えました。すぐに急ブレーキを掛けたのですが、タイミング的には間に合いませんでした。もし本当に人間だったら間違いなく轢いていたと思います。でも、轢いた衝撃はまったくありませんでした。車はそのまま、キキーッ、ガクンと音を立てて止まりました。不可解な現象に(もしかしたらSさんかもしれない)と気付き、急にゾッと寒気が襲ってきました。でも万が一にも何かを轢いていたらすぐに救急車を呼ばなければなりません。車を降りて周囲を一通り調べました。ぶつかったと思しき車の前部には傷一つありませんでしたが、水溜まりに突っ込んだかのように泥がついていました。その日は晴れでしたし、車も定期的に洗車していたのに…。すぐに帰ってホースで水をかけ、泥を洗い流しました。
それ以降も、Sさんが遺体で発見された近くで幽霊の目撃談が相次ぎ、ついに近隣の村人たちでお金を出し合い、霊能者を呼んで除霊してもらいました。除霊以降、怪現象はピタリとおさまりました。霊障って本当にあるんですね。Sさんが成仏してくれたことを祈ります。
(麻里子さん 46才・香川県)