第63回 祭壇の上に立つ男性
お葬式で祭壇のところに不思議なおじさんが立っていました

幼い頃、親戚のお葬式に行った時に、霊を見たことがあります。三歳か四歳のころで、お葬式とは何なのかすらあまりわかっていなかったので、ただ親に言われるがまま席について大人しくしていることだけ意識していました。わたしは落ち着きのない子で、とにかくじっとしているのが苦手だったので、親に何度も「静かにしなさい」「じっとしてなさい」と言われ、必死に我慢していたのを覚えています。
読経の時間はとても苦痛でした。席を立って遊びに行きたくなってソワソワし始めた時、不思議なところに人が立っているのに気づきました。ご遺体がある奥、祭壇のようなところ(今でも正式名称がわかりません)に、一人のおじさんが立っているのです。なんであんなところに立っているんだろう、いいな、何かの係の人かな、と思っていました。母に質問しようとしましたが、怒られたら怖いので、読経の間ずっと無言でその人を見ていました。
それからご焼香の時間になって、ご遺体のそばに行きました。その時、祭壇に掲げられている故人の写真を始めて見たのですが、さっき祭壇に立っていたおじさんと同じ顔をしていました。祭壇を見てみると、まだそのおじさんは立っています。「お母さん、この人そこにいるよ」と言ったら、頭を叩かれ「静かにしてなさい」と怒られました。
当時は本当に何がなんだか分からなかったのですが、大人になって死や葬式について一通り理解してから思い返して「あれは故人の霊だったんだ」と理解できました。あまり怖くなくて申し訳ありませんが、これが私の唯一の心霊体験です。
(百合香さん 40才・高知県)