第68回 不可思議な空き部屋
隣りの部屋から独り言や物音が聞こえるので…

10年ほど前に住んでいたマンションの部屋で妙な現象に遭いました。正確に言うと妙な現象が起きていたのは隣の部屋だったのですが。引っ越してすぐの頃から、隣の部屋の人の立てる物音が気になっていたんです。賃貸物件ですし、我慢できないというほどではなかったのですが、夜になるとわりと大きめの独り言のような声がたまに聞こえてきたり、何かをこするゴリゴリという音がたまに聞こえてきたりします。どちらもたまにです。普段はとても静かなのですが…。
ある日、別件で管理会社の方とやり取りする機会があったので、ついでに隣の部屋の方について少し伺ってみました。「夜になるとたまに大きめの物音や声が聞こえてくるんです」と話すと、少々お待ちください、と言われ、隣の部屋にお住まいの方について少し調べてくれたのですが、戻ってきた担当の方はちょっと気まずそうな感じで「申し訳ありません、お隣の部屋にはずっと誰も住んでいませんね…」とおっしゃったのです。
私は確かに人の気配や物音を聞いているんです、と言いましたが、誰も住んでいない、の一点張り。どうやら本当に誰も住んでいないようなのです。もしかして…と思い、「隣の部屋は過去に事件や事故が起きているとかありませんか?」と訊ねました。すると「いえ、一切起きていません」と言われましたが、「でも、不思議と人が居付かない部屋なんですよね。皆さん入居されても数ヵ月で出て行ってしまって。事故物件を疑われたことも何度もありますが、別に隠しているとかではなく、本当に過去何もないのです」とのことでした。
誰も住んでいない、事故物件でもない、では一体あの物音は一体…。その後、管理会社の方がオーナーさんと話をして、近所の神社から神主の方を呼んでくれてお祓いをしてくれました。一通り儀式を済ませ、天井裏のような空間にお札を貼ったそうです。するとそれから物音はピタリと収まりました。結局、その部屋には契約期間の2年間ずっと住んでいましたが、お祓い以降も隣の部屋はずっと空室のままでした。
(真土香さん 29才・神奈川県)