第70回 入院中にあった不思議な出来事
私が見たものは死神だったのでしょうか?

高校1年生の時、部活で足を骨折してしまい、大きな病院で入院しました。私が入ったのは同世代の人からご年配の方がいる大部屋。私の隣のベッドには、80歳くらいのおばあさんがいました。その女性も太ももの骨を折ってしまったそうですが、ケガをしていること以外は至って健康な、元気な方でした。隣同士ということもあり、すごく親切にしてくれ、「私にも孫がいてね…」とよく話してくださったことを覚えています。
入院生活も数週間が経った頃、夜中に目が覚めてしまいました。どこからか、「うーん、うーん」とうなり声が聞こえてきます。隣のおばあさんの声でした。こっそりカーテンを開けて覗いてみると、おばあさんの上にどす黒い黒い影のような塊が乗っかっているのが見えたのです。思わず声を上げてしまうと、影はどこかに行ってしまいました。気が付くと朝で、おばあさんはまた元気に「おはよう」と言ってくれました。
ところが、それから数日後、みるみるうちにおばあさんの容態が悪くなっていきました。あんなに元気だったのに、ふさぎ込みがちになり、やがて起き上がることもできなくなってしまったんです。そして、それから1週間も経たないうちに、おばあさんは帰らぬ人になってしまいました。おばあさんの親戚や看護師たちは「ご年配だったし、大きなケガだったからね」と言っていましたが、私はあの黒い影がおばあさんを連れて行ってしまったんだと思えてなりません。私が見た影は、死神だったのでしょうか…?
(坂巻さん 29歳・岩手県)