第73回 不思議な目撃談
急死した昔の友人。死後も目撃談が相次ぎ…。

先日、昔の友人が亡くなりました。死因は不整脈でした。本当にいきなり亡くなってしまったらしく、遺体が発見されるまでに数週間かかったそうです。その話を聞いたときは驚きました。彼が亡くなったこと自体にも当然びっくりしたのですが、本当の理由は、つい先日駅のホームで彼を見かけたからです。特に変わった感じはありませんでした。向かいのホームで電車を待っていて、こちらには気づいていない様子だったので、大声で呼びかけることもしませんでしたが……。
私以外にも不思議な体験をした人がいたそうです。まずは会社の人。彼が急に出勤してこなくなり連絡も来ないので不審に思い訪ねたそうですが、マンションのエントランスで彼の部屋のインターホンを押したところ、彼が出たというのです。「ご迷惑おかけして申し訳ありません」と言ったそうで、やや聞き取りにくかったものの確かに彼の声だったそうです。それで会社の方も精神的な不調かもしれないと思い、しばらく様子を見ることにしたそうですが……。
また、彼が生前交際していた相手の女性も、推定死亡日の一週間ほど後、街で彼を見かけたそうです。彼女も急に連絡が取れなくなり不審に思っていたそうですが、声をかけようとしたところ無言でどこかに向かって歩いていったそうで、その姿を見て「振られた」と思ったそうです。
他にも、同じマンションの住人で彼を見かけたという人がいました。
そういった話が相次いだ結果、遺体が腐敗を始めて異臭を放つようになって初めてその死が公になったそうです。なぜこんなに死んだ彼の目撃談があったのかわたしなりに考えたのですが、もしかしたら彼は自分が死んだことに気づいていなかったのかもしれません。
(早紀さん 32才・兵庫県)