第76回 亡くなった兄
幽霊が見える子供の話

保育士をしています。私が受け持つ2歳児クラスにいるなぎさちゃん(仮名)は、いわゆる“見える子”のようなんです。いつもぼーっと空を眺めているかと思えば、教室の隅の方で一人何かと楽しそうに話していたり…。気になって、「なぎさちゃん、誰と話しているの?」と聞いてみると、「おにいちゃん」と答えました。話を聞くうちに、なぎさちゃんより少し年上の子供に遊んでもらっていることがわかりました。なぎさちゃん以外の子供には見えている気配はなく、ちょっと気になったので、保育園の連絡ノートにそのことを書いてみることに。すると翌朝、なぎさちゃんを園に送りに来たお母さんから声をかけられました。そして、なぎさちゃんのお母さんは、神妙な面持ちで「先生、連絡ノートのことなんですけど……」と何度か言いよどんだあと、話してくださいました。
「実は、なぎさの前に、男の子を妊娠していたんです。でも、死産になってしまって……。もしかしたら、なぎさのところに、その子が遊びに来ているのかもしれません………」と、涙ながらに話してくださったなぎさちゃんのお母さん。思わぬ展開に、私も涙があふれてしまいました。それからも、なぎさちゃんが一人で誰かと話している様子は確認できました。なぎさちゃんのお母さんから話を聞いて以来、その光景を目撃するたび「またお兄ちゃんが妹のもとに遊びに来てくれているんだな」と、ほっこりとした気持ちになります。
(あすみさん 29歳・神奈川県)